部落差別動画の削除(市長日記R3.6.2)

更新日:2021年06月02日

令和3年6月2日

市内の集落を撮影し、部落差別を助長するインターネットサイトに投稿された動画について、市は神戸地方裁判所柏原支部に削除を求める仮処分を申立て、これを命ずる決定が出されました。

部落差別動画の削除を命ずる仮処分は全国初とのことです。このことが5月31日の神戸新聞の記事で報じられ、続いてテレビや新聞など多くのマスコミに大きく取り上げられました。

自治会から市に相談を受けましたが、あまりに悪質なもので、人としてこんなことをする人がいまだにいるのかと驚きました。

長年の部落差別をなくす市民あげての努力をないがしろにされるもので、これを削除するのは市の責任であると考え、手続きをとったものです。

地元自治会としては、あまり触れられたくないという思いが強かったため、これまで公にせず、6月1日の市議会で報告することとしていました。

したがって、こんなに大きく取り上げられたことに、さらに驚きました。

 

今回のことをきっかけとして、他の自治体も部落差別をなくすため、さらに一歩を踏み出すことができると思います。被害を受けた集落だけでは弁護士費用などが必要であったり、名前も出さなければならずちゅうちょしてしまいます。自治体としてこのような動画を放置するわけにはいきません。

 

それから動画を扱う運営会社も、何でも載せればいいわけではなくて、差別や人権に関わるものはチェックしていく体制が必要だと考えます。表現の自由があるからといって差別が許されるはずがありません。

 

なお、従前はネット上の同和地区の情報について、これを削除するには「差別を助長、誘発する目的」を必要としていたようですが、平成30年12月の法務省課長通知で次のように見直されています。

 

『部落差別は、その他の属性に基づく差別とは異なり、差別を行うこと自体を目的として政策的・人為的に創出したものであって、本来的にあるべからざる属性に基づく差別である。

【中略】個人の尊厳や法の下の平等を基本的価値とする現行法秩序とおよそ相容れないものである。それにもかかわらず、このような身分差別が廃止され、100年以上が経過した現在もなお、その地域の居住者、出身者等について否定的な評価をするという誤った認識が国民の一部に残っている。

このような現実を前提とした場合、特定の者を同和地区の居住者、出身者等として識別すること自体が、プライバシー、名誉、不当に差別されない法的利益等を侵害するものと評価することができ、また、特定の者に対する識別ではなくとも、特定の地域が同和地区である、又はあったと指摘する行為も、このような人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものであるということができる。

このように、特定の地域が同和地区である、又はあったと指摘する情報を公にすることは、その行為が助長誘発目的に基づくものであるか否かにかかわらず、また、当該地域がかつての同和地区であったか否かにかかわらず、人権擁護上許容し得ないものであり、その点で他の識別情報と性質を異にするものである。』

(平成30年12月27日付け、「インターネット上の同和地区に関する識別情報の適示事案の立件及び処理について(依命通知)」(一部抜粋))

 

また、中学校の公民の教科書(日本文教出版)には、「部落差別をなくすために」と題し、

『・・・差別からの解放を求める運動がねばり強く進められてきました。・・・同和問題が人間の尊厳にかかわる問題であり、早急な解決が国の責務であり、国民の課題であると明記しました。・・・差別を許さない運動や、学校や社会で差別をなくす教育が進められて、多くの人が差別に立ち向かっています。』

と書かれています。

(日本文教出版:「中学社会 公民的分野」)