「一年半待て」(市長日記R3.6.16)
令和3年6月16日
「一年半待て」
これは松本清張の小説の題名にあります。
昨日(6月15日)付の市長日記に書いた県の勧告は、まさにこの「一年半待て」というものでした。
桑原集落内で養鶏業を行っている事業者に対して県が勧告を行い、鶏舎が建設されている土地を農地として原状回復する期限を来年12月11日までとしたからです。
したがって、あと一年半、地域住民の皆さんは待ち続けなければなりません。県の勧告が出されたのは一歩前進だとしても、一年半たってきちんと移転され、根本的な解決ができるか不安もあります。
まだまだ解決には遠いとも言えます。
そのため、市としても解決に向け、たゆまず前進しなければなりません。
養鶏業者の悪臭や騒音などに苦しんでおられる桑原集落は丹波篠山市のいちばん北にあり、そのなかの「河谷(こうだに)」と呼ばれる小さな谷あいの地区です。その名のとおり川と谷がある「山紫水明」がぴったりの自然豊かなところです。
私が一番最初にこの地を訪れたのは、地方政治を志してチラシを配った時です。まだこんなところがあるのかと感動しました。
ですから、ここにあこがれ移り住んできた人もあります。決して便利とは言えませんが、清く、安らかで、あたたかな土地なのです。今ここで住む人も、すでに故人になった人たちもこのふるさとをこよなく愛したのです。こんなかけがえのないふるさとが、一事業者の利益のために奪い取られてよいはずがありません。
この養鶏業者は、自分はそれほど悪い飼い方をしているわけではないと思っておられるふしがあります。
しかし、間違いなく悪臭防止法にも違反する臭気が出ているのです。この測定は今臭いからといってすぐにできるのではなく専門の業者に測定してもらいますので、基準を超えていても計測できなかった回数も相当あるはずです。
そんな苦しみ、訴えに全く耳を傾けないのは事業者として許されないと信じます。
市の環境保全条例では、「公害関係法令等及びこの条例に違反しない場合においても、良好な環境の保全を図るため最大限の努力をするとともに、その事業活動により生活環境に係る紛争が生じたときは、誠意をもって速やかにその解決にあたらなければならない」と定めているのです。
にもかかわらず、誠意をもって解決しようともせず、逆に、つい先週も被害を訴える住民を困惑させ畏怖させるような文書を配布されたのはあまりに悪質です。
少なくとも桑原の住民の皆さんには、何一つの非も落ち度もありません。何の責めもありません。心静かに安心して住み続けられることをひたすら願っておられるだけです。
事業者が心ある方ならば、住民の皆さんをこれ以上苦しめるべきではありません。
「一年半」が必ず守られることを心から願います。
更新日:2021年06月17日