クマともりとひと(市長日記R3.7.20)

更新日:2021年07月21日

令和3年7月20日

先週、福住コミセンでのこんにちは市長室でたくさんのお話を聞かせていただきましたが、その中で「熊がオリに捕まったが、怖いので殺してほしい」と言われた方があり、野生動物、特にクマとは共生が難しいと感じていました。

 

そんな時、ちょうど日本熊森協会の方が訪問されました。

日本熊森協会は、クマをシンボルとしてクマの生存や森を守ろうとする自然保護の団体です。

活動のきっかけは、尼崎市の中学校の理科の先生と生徒たちが絶滅寸前のツキノワグマを守るために立ち上がったことだそうです。

「クマは本来、森の奥でひとりでひっそりと棲んでおり、見かけと正反対で大変臆病、人を襲う習性など無く、人身事故はこわがりのクマが人間から逃げようとして起こすもの」

「奥地までスギ、ヒノキが植林され、クマたちはねぐらとえさ場をなくしてしまい、人里に出てくると有害鳥獣として駆除され、残り60頭、絶滅が時間の問題となりました」

 

そこで、1993年16人の生徒たちは兵庫県の貝原俊民知事に手紙を書き、知事が出会われました。

生徒たちは貝原知事にたずねました。

「絶滅寸前の兵庫県野生ツキノワグマについて、

1案 野生で絶対に残さなければならない

2案 できたら残した方がいい

3案 どちらとも言えない

4案 できたら駆除したい

5案 すべて駆除したい

知事に、あなたはどれをお選びですかとたずねました」

知事は即座に、「1案に決まっているよ。野生で残さないと意味ないだろう」と答えられました。

これに続いて、1994年兵庫県での全国植樹祭の時、スギを植える植樹祭から26種類の広葉樹を植えることに変更されました。さらに、当時の環境庁長官が「兵庫県のツキノワグマ、絶滅のおそれにつき狩猟禁止令を発令します」と発表されました。

 

その後、20年以上にわたって狩猟が禁止されていましたが、生息数が増えたことから2016年に狩猟禁止が解除となり、一定数を捕獲したため2019年には再び狩猟が禁止されています。

 

現在の県内の生息数は500~800頭と推定されています。

ただし、有害な個体の捕獲は認めています。有害捕獲したクマはほとんどが殺処分されているようです。県内の有害捕獲件数は、令和元年度が120件、令和2年度は53件となっています。有害捕獲というのは、危険な個体を識別してこれに限り処分することです。クマは怖いから人里近くに現れたらすぐにすべて殺処分、というのでは「有害」の意味がなくなると思われ、かつてのような学習放獣(たたくなどして人間は怖いと教えて放すこと)がなくてよいのかと考えられます。

 

お越しいただいた熊森協会会長の室谷さんは、初代の森山さんの教え子だそうです。ドングリを植えたり、大切な土地を買い取ったりといった協会の活動はすべて寄付金で運営されています。

「殺処分では被害は防げない、豊かな森を復元することが大切」とのお話が印象的でした。

 

そのご活躍に敬意を表し、共生の道に努力すべきだと思いました。

市長と熊森協会の方が一緒にパンフレットを持っている。両隣には市職員や協会の方が並んでいる。

▲左から4人目が室谷会長、左から2人目は農都整備課森づくり係の安井君。安井君は学生時代に熊森協会の活動をしていました。