桑原地区の養鶏事業者からの悪臭問題「生活環境の著しい侵害」と認定(市長日記R5.9.25)

更新日:2023年09月25日

令和5年9月25日

1.丹波篠山市の抱える公害問題に、桑原地区の養鶏事業者からの悪臭などの問題があります。

この事業者は、昨年12月28日までに桑原地区の鶏舎から鶏を搬出され、新たに京都府京丹波町で事業をされています。

したがって、悪臭の問題は現状では解消されていますが、鶏舎の骨組みや飼料タンクが残存し、将来にわたって地域の皆さんが安心できる抜本的な解決にはいたっていません。

 

2.丹波篠山市はこの公害問題を解決するため、一生懸命に取り組みを続けてきました。

市から事業者には、これまで延べ6回にわたり改善の勧告や命令をしましたが、裁判で争われるばかりで、しかも事業者は途中で裁判を取り下げられてきました。

しかし、この件で最後に残っていた裁判である令和2年11月18日付での改善命令についての裁判に関しては、市は途中の事業者の裁判の取り下げに同意せず、判決をもらうこととしました。

その判決が9月12日にありました。

 

3.この裁判は、丹波篠山市から事業者への令和2年11月18日付の丹波篠山市環境保全条例に基づく改善命令について、事業者がこの命令が違法であるとしてその取り消しを求めて訴えられたものです。

結論は、「訴えの却下」となりました。

その理由は、市の条例に基づく改善命令はそれにより定められた措置をとるかどうかを事業者は自由に決めることができ、法的に強制されるものではないので、取り消し訴訟の対象とはならないというものです。

 

4.さらに、この判決では、取消訴訟の対象となった場合について、次のように、事業者の養鶏が「生活環境の著しい侵害」を認定されました。

「本件、養鶏場においては、平成30年10月19日から令和2年8月6日にかけて実施された調査で規制基準を上回るアンモニアが検知されている。検査が1年10か月にわたる複数回の機会に実施されていることを踏まえると、特定の日時に高い数値が検出されたのではなく、継続的に本件養鶏場における事業活動に伴って悪臭防止法の判断基準を上回るアンモニアが排出されていたものと推認することができる。

また、本件養鶏場からは、移転後間もない平成17年当時から悪臭が発生し、その後、鶏舎が増設されたことからすると、本件命令時点でも悪臭が生じていたことが強くうかがわれる。そうすると、本件養鶏場は、生活環境を著しく侵害していたものと認められる。」

 

5.なお、この改善命令は、前記の「生活環境の著しい侵害」だけでなく、「家畜飼養施設設置の届出がなされていないこと」「家畜飼養施設の100メートルの規制距離違反があること」「農地法、農振法違反があること」「悪臭防止法の立入検査拒否があること」も根拠としていました。

いずれも争われていたのですが、「事業者が飼養施設の設置届出がなされていないこと」「施設が条例に定める規制距離に違反すること」も認められました。

ただし、市の条例に基づく改善命令が、仮に法的に強制される処分であった場合には、農地法・農振法違反、悪臭防止法の立入検査拒否の点について、農地法の権限は都道府県知事にあることや、農地の保全と市の生活環境を守る条例とは別のものであると解して、これを処分の根拠とすることはできないと指摘されました。

もっとも、裁判において「農地法違反の事実がない」ことや「農振法違反の事実がない」こと、「悪臭防止法の立入検査拒否がなかった」ことが認められたものではありません。

 

6.「生活環境の著しい侵害」があったと認定されたことは、苦しんでこられた地域の皆さんにとって、少しは救いだと思います。

市においては、これからも丹波篠山市の良好な生活環境を守っていきます。