後川の里の烈婦「そよ女」

更新日:2021年10月13日

後川の里の烈婦 そよ女

山紫水明にいだかれた後川の里、遠い昔は奈良東大寺の荘園であったところである。 後川の秘湯篭坊温泉は平家落人の伝説を持つ炭酸の冷泉であるが、昔から数軒の宿屋が軒を連ね、近郷近在から訪れる湯治客も結構あり、にぎわいをみせていた。 この平和な里後川に江戸時代の終わりころ珍しい事件が起きた。 文化9年(1812)8月16日夜、後川村百姓友七方へ盗賊が押し入った。おり悪しく主友七は近所の寄合で出かけていて留守だったが、女房そよは盗賊に臆することなく、もみあいになり、盗賊の刀を奪い取り、大立ち回りにおよんだ。 そよに剣術の心得があったどうかわからないが、自分も多少の傷を負いながら、賊に傷を負わせ、一物も取られず賊を撃退することが出来た。 藩庁から弱き女の身をもって、白刃に臆することなく、一家の危機を救ったとして賞められた。 その後、賊は源三郎というもので、そよの切り込んだ傷が手掛かりで捉えられた。あんな強い女見たことがないと賊も舌を巻いたという。