篠山の歴史を知る「篠山町75年史」ー「教育(図書館)」

更新日:2020年05月15日

多紀郡教育会図書館時代

篠山町に図書館と名のつくものが出来たのは昭和3年4月である。当時の多紀郡教育会が、会長斎藤幸之助の主張と尽力により、御大典記念事業として「多紀郡教育会図書館」というのを、元多紀郡役所の一隅(現、地方事務所北側庁舎の東端)を借って開設したのが、篠山町に於ける図書館の始まりである。

当時の蔵書は、明治43年頃からあった多紀郡教育会巡回文庫の一部と、下二階町雞鳴文庫の整理したもの、その他を基幹として約1,700冊で、図書館兼事務室が10坪、閲覧室は僅かに一間半四方2室、専任事務員1名(現、町内図書館中山正二)というささやかなものであったが、利用者は1日平均30人位であった。

本郷大将記念図書館時代

昭和8年頃、郷土の大先輩、故本郷房太郎大将の多年に亘る恩誼と徳望に対し、感謝の意を表し、旦つこれを永く後世へ伝えるため、時の篠山町古川岩太郎主唱のもとに、大将生家(昭和28年取壊し市民講堂となる)の隣接地に記念図書館を新築することとなった。

 

・本郷房太郎

万延元年、青山家武道指南の家に生まれ、故青山忠誠の簡抜によって東京に学び、陸軍に従事して累進、大正7年陸軍大将に親補された。

同10年、40余年の軍職を辞して後も、久邇宮家宮務監督、大日本武徳会長に推されて一日も君國を忘れる暇はなかった。

しかも愛郷の志頗る厚く、常に郷里のことに意を注ぎ、苟しくも事郷土に関する限りそれが町村の公事たると個人的私事たると問わず、多忙な公務のかたわら、幹旋盡力の労を厭わなかった。

ことに後進の誘掖指導には最も意を用い、心血を注ぎ、身を以て範を示し、善処したので、郷人の敬幕すること慈父を如くであった。

明治41年、当地に歩兵第70連隊が設置された如き、又大正14年、存廃の岐路にたった当地連隊が幸にして存置の決定を見たる如き、もとより当時町民の熱意と町当局の所置よろしきを得たためとはいえ、又蔭に大将の適切な指導と幹旋による所が多かったのである。

我が郷土の今日あることは、一面大将の愛郷の熱意の賜であるといっても過言ではなく、その隠れた功績は大きい。

 

当時、多紀郡町村長会では、銅像建設の決議をしたのであったが、昭和6年3月大将の歿後、時代の趨勢と本郷家の希望により、銅像を中止して社会的に意義のある事業として記念図書館を建築することとなったのである。ときあたかも、全国的に図書館事業勃興の機運が盛り上がっていた時でもあり、全国の大将旧知の人士及び郷友に呼びかけた結果、指定寄附金8,900余円を得たので、この金額を充てて建築することに決し、昭和8年8月着工、翌9年5月竣工、さきの「多紀郡教育会図書館」を合併して公立図書館とし、篠山町外18ヶ村一部事務組合立本郷大将記念図書館と命名して開館した。(実際は4月10日より)総建坪延75坪、これが現、篠山町立図書館の前身である。

人口8,000人にも満たぬ町で、これだけの独立館舎を持つ図書館は今もなお県下に稀であり、当時としては篠山町最初の鉄筋コンクリート建物として異彩を放ったものである。専任職員として司書1、補助1、以来12年間、利用者1日平均約60名、蔵書約7,000冊となった。

昭和21年12月、篠山町外18ヶ村一部事務組合は、図書館経営を篠山町へ移譲した。

篠山町立図書館

かくて、昭和22年1月より篠山町において図書館の経営に当たることになったのであるが、同時に館名を現在の「篠山町立図書館」に改めた。

昭和23年1月より嘱託員1名を増員して、館内施設の改造と運営法の革新に当り、且つアメリカ進駐軍の経営せるCIE図書館の協力を得て従来の面目を一新、昭和24年11月1日には、館の運営よろしきを得、郷土文化の向上に寄与したかどにより、兵庫県教育委員会より県下優秀の図書館として表彰を受けた。

ついで、公共図書館が市民の教養のためのサービス施設として、より完全にその役割を果たすためには、単に図書だけではなく、広範囲の資料を必要とすることが次第に認識されてきた結果、昭和25年4月、劃期的な図書館法の公布によって、視聴覚教育資料としてのレコード、フィルム、スライドなど、図書以外の記録の収集と活用が、図書館の新しい活動分野に入ってきた。

昭和25年には、篠山読書会が創設され(現在会員約100名)会員自体の研修と共に図書館の後援団体として活動、翌26年からは、毎年夏休みに主として子供の為、緑陰図書館を開催、又毎月2回、優秀な電蓄によるレコードコンサート定期に行う外、27年からは毎月童話会、幻燈、映画の会等を開催、現在に至っている。

昭和28年、地方教育委員会の設置によって、図書館は篠山町教育委員会の管下に入り、その年の3月には館員更に1名増員し、事務室の第2次改造を行い、翌29年には篠山小学校の旧郷土室を移して、後庭に第2書庫(9坪)を新設した。

現在、前記催しの外に、多紀文化顕彰会其の他各種文化団体と提携して、展示会、研究会、座談会などを随時開催、又郷土の文化財スライドの作製に着手している。更に、又電話その他による問合せ事項に対し、資料によって回答することにつとめる等(参考事務という)社会教育センターとしての使命に邁進している。

 

昭和31年1月現在、専任職員は館長兼司書1、司書補1、書記1、書記補1、計4名。

設備、書庫延28坪、第2書庫9坪、事務室6坪、開架図書室5坪、閲覧室15坪、児童室9坪、宿直室3坪、物置12坪、其の他計966坪。

蔵書約14,000冊、レコード230枚、スライド3巻、電蓄、幻燈機各1、図書の利用人員、館内閲覧、館外貸出を合せて1日平均約150名である。

図書館26年の歩み

図書館26年の歩み
年度 登録資料
数(冊)
利用人員(人) 経常費 専任
職員数
備考
館内利用 館外貸出 一日平均
昭和3 2,152 8,053 1,388 9,441 32.7 885 1 多紀郡教育会図書館として創設
昭和9 4,654 12,508 2,368 14,871 54.5 2,073 2 本郷大将記念図書館として新築
昭和14 5,998 15,566 3,734 19,300 65.2 1,470 2  
昭和19 6,844 4,134 7,189 11,323 40.2 2,507 2 敗戦の前年
昭和22 7,114 4,339 10,653 14,992 54.1 56,930 2 篠山町に移管
昭和25 7,788 12,798 8,623 21,421 75.3 477,554 3 図書館法公布
昭和28 9,841
レコード
184
19,015 21,617 40,632 145.7 800,872 4  
 

このページの記事は「2005年トライやる・ウィーク」で篠山市立篠山中学校の2年生3名が作成したものです。