将来世代を考える政治を!(市長日記H24.7.23)

更新日:2020年03月24日

平成24年7月23日(月曜日)

 今から3年前のわが市長日記です。 

『政権交代が実現した。
これまでの政治に対する、不満や怒り、変えようという多くの国民の声が届いた。
これで国の形が大きく変わることに期待している。
子ども手当をはじめ、後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の見直し、年金制度の一元化、医師数1.5倍、農家への戸別所得補償など。コンクリートなどのハード重視から、福祉、教育、年金などの生活重視に軸足を移される。
特にこれらのことを実現するのに、年間10兆円ものムダを省くと言われていることについて、どのようにすすめられるのか楽しみにしている。』

 これが今、大きな失望に変わっています。

 消費増税はぎりぎり止むを得ないとしても、何の話もなかったTPPを推し進め、あまりに安易に原発の再稼働を認めました。

 野田総理は「心から謝罪する」「国民あげて議論する」などときれいな言葉を使われますが、口だけだとわかりました。

 先週、山形県の舟山 康江さん等3氏が民主党を離党され、新会派「みどりの風」を設立されると発表されました。

この舟山さんは、篠山市と防災協定を結んだ鶴岡市の縁で、昨年篠山にお越し頂いたことがあります。農都篠山の視察に来て頂きました。

 この舟山さんも民主党を離れたら、あとは誰がいるんですか、かと言って、昔のままの自民党にも戻りたくないというのが多くの人の思いのようです。

 「政治劣化」と題した、神戸新聞の記事がありました。なるほどと思いました。

 以下、平成24年7月21日の神戸新聞より一部抜粋

 政治家、それを選ぶ国民も含めた社会のあり方について文化人類学者の上田紀行氏に尋ねた。

―政治、社会の現状をどう見るか。

「最近、あかんと思ったのは、野田 佳彦首相が関西電力大飯原発を再稼働させるにあたって『精神論だけでできるかというと、万が一ブラックアウト(大規模停電)が起きたら大変な悪影響が出る』と言ってしまったこと。再稼働に反対の人たちは精神論ではなく現実論を言っている」

「活断層がある可能性が高い上に、大地震が起きやすい状況になっている。安全性を担保する組織もできていないし、電力会社や規制当局はやばいことを隠し続けている。もう一回、東京電力福島第1原発と同じような事故が起きたら日本は終わりだ。これこそが現実論だ。それを精神論と言ってしまった。恐るべき現実感覚、精神の貧困だ」

―現実認識から間違っていると。

「野田首相の言う現実は『すでにあるもので、追随しなければいけないもの』だ。かつて(思想家の)丸山 真男氏が、日本人にとっての現実は『つくり出していく』という感じがすごく弱い、と言ったが、その指摘はそのまま野田首相や今の政治家にあてはまる」

「敗戦を経験した世代は、焼け野原から復興、成長していく様子を見ているので、現実をつくり出していくという感覚があった。しかし、敗戦を知らない世代は、そうではない。『原発がなくてもいい社会』をつくり出していかなければならないのに『今の社会は原発を必要としている』と思い込んで『原発がなくてもいい社会』を目指す人たちを精神論と言ってしまう」

―国民の側の課題は。

「経済成長を背景に昭和30年代からバブル期まで、国民から『気持ち良さ』を求められ、それを与える政治が続いた。すでにかなり気持ち良い状態なのに、そんな傾向がいまだに続いている。もはや気持ち良さを増やすことはできないから国民は不機嫌になり、首相や政権を代えたりする。国民の側が、気持ち良さ以外の人生のあり方を持たなければならない」

―首相の首をすげ替えるとほかの人は免責される。無責任の極みかもしれない。

「政治家も自己愛が強すぎる。国の持続可能性よりも自分の政治家としての持続可能性を考えている。自分のこと、私のことしか考えない人たちが政治をやっている。未来なき政治だ。使用済み核燃料と国債の問題にそれがよく現れている。いずれも解決を未来に託す甘えの政治だ」

―どう政治に向き合うべきか。

「自己愛を越えて本当の意味の愛国心を持たなければいけない。国に忠誠を誓って私を犠牲にすることではなく、将来世代のことを考えることだ。国土を含め、いい物を手渡していかないといけない。われわれの世代は放射能をばらまいてしまった。同じ世代のことを考えるという水平の思考から、将来世代のことを考える垂直の思考に変えていかないといけない」

上田 紀行(うえだ・のりゆき) 58年東京都生まれ。東京大大学院博士課程修了。専門は文化人類学。医学博士。近書に「生きる覚悟」(角川SSC新書)など。

『神戸新聞』平成24年7月21日(土曜日)掲載