「生物多様性に配慮した公共事業のあり方」(市長日記H26.2.6)

更新日:2020年03月24日

 1月31日、上記の内容で職員研修会を開きました。

 兵庫県の県土整備部の総合治水課、河川整備課、そして篠山土地改良事務所の担当者から、篠山市職員にお話をして頂きました。

 これを踏まえ、篠山市職員は、関心を持ち、さらに勉強し、チャレンジし、そして、さすが「世界のみなさん こんにちは」の篠山市と言われるような取り組みを進めたいと考えます。

(1)生態系に配慮した川づくり(兵庫県総合治水課、岸原 みゆきさん)

 平成2年に国から「多自然型川づくり」の推進について、通達がありました。「多自然型川づくり」とは河川が本来有している生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全、創出する事業をいいます。

 平成9年には河川法が改正されて、治水、利水とあわせて環境の重要性がうたわれました。

 そして、平成18年には国から「多自然川づくり」の推進についての通達があり、「多自然型」から「多自然」に変わりました。これは、多自然川づくりは、ひとつの「型」ではなく、すべての川づくりの基本である、普遍的な川づくりの姿であるという考え方です。

 これに基づき「中小河川に関する河道計画の技術基準がまとめられています。

 兵庫県においても「人と自然の川づくり」を推進し、手引書、条例集を作成しています。

 基本的な考え方は

  1. 瀬、淵、ワンドなど多様な河川形態を保全、復元する
  2. 魚道、水際、支川合流など連続した環境条件を確保する
  3. 注目すべき生物の保全を図る

ということです。

 具体例として、瀬や淵の創出、袋詰め玉石による流れの変化の創出、粗石付き斜路による落差解消、魚道設置、ふとんかごを用いた段差の解消、河畔林の再生、現地発生材(自然石)や木杭を用いた水際部の創出、魚巣ブロックなどの紹介がありました。

 最後に、視点は広く(その川らしさを残せるか)、ひとつの答えはない、どうやって方向性を出すか(地元との合意や有識者を入れて決める方法)、川が川をつくるようなちょっとした工夫が必要(お金をかけず、スポット的にもできることはある)、とにかくやってみる、自分で考えてみる(試行錯誤、たくさんの事例を知る、コンサル任せにしない!)

(2)河川災害復旧事業について(兵庫県河川整備課 恒藤 博文さん)

 国において、平成10年6月に「美しい山河を守る災害復旧基本方針」を策定して、河川環境の保全に配慮した災害復旧を実施することとされ、災害復旧においても、環境や生態系への配慮が必要とされました。

 また、「特定小川災害関連環境再生事業」といって、未被災箇所を含めて環境に配慮した工法で復旧する事業もあります。ということでした。

(以下は私の文章です)

 災害復旧というと、安直にコンクリートで固めるだけというイメージでしたが、上記の美しい山河を守る「復旧方針」では、「コンクリートむき出しの護岸による復旧は、改正された河川法の趣旨から、不適当である」と明らかに示されています。

 そして設計上注意すべき事項として

  1. 河道特性をふまえ、被災原因に対応した必要最小限の復旧工法を選定する
  2. 従前からあった瀬や淵を残すなど、環境を大きく改変しないことを基本とする
  3. 河川環境への影響を最小限にとどめるため、河床を改変する部分は自然な形状の河床となるようにする、水際線を単調化させない、水際域はできるだけ固めないなどの配慮をする
  4. 被災箇所や近傍から入手できる木や石などの自然素材の活用を図る
  5. コンクリートブロックなどの人工素材を使用する場合には、それらの治水や環境機能と災害復旧箇所の河川特性との整合性を十分考慮する。

ことなどが示されています。

(3)農業農村整備事業における環境配慮の取り組みについて(篠山土地改良事務所 中谷 毅さん)

 国では平成13年に、土地改良法が改正され、「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の手引き」がまとめられました。

 これらを受け、兵庫県では平成15年から、環境との調和への配慮の取り組み経過を記録する「環境配慮カルテ」の作成に取り組み、平成23年には「農業農村整備事業にかかる環境との調和への配慮推進要綱」を制定しました。

 この要綱は原則として、すべての農業農村整備事業に適用されます。

 篠山市では、従前から篠山統合井堰(和田)や、青山井堰(風深)の魚道の設置、ため池改修にあたっての生態系調査、環境配慮カルテ作成、などにつとめています。

 また、水路底への礫敷施工、深みや魚巣の設置、水路に杭並べて設置、階段的落差工の設置などの事業が考えられますが、地域とともに連携を図ることが重要です。

(4)これら、基礎的なことが十分認識されていなかったかもしれません。

 少し前までは、当たり前のようにコンクリート三面張り工法、コンクリート水路でした。

 災害時はいちばん安価なコンクリートを張ることでした。残念ながら市内もそんな川や水路ばかりになりつつあります。

 国ではかなり以前から大きな配慮に転換しているのです。

 いちばん市民に身近で、いちばんこの自然の命輝く篠山を守るべき、篠山市こそ、もっと、国や県に先んじて、取り組みをすすめたいものです。

 ひとりひとりが、いろんな工法を勉強し、チャレンジし、安直にせず、考えて計画することが必要です。

 当面の課題としては、地域整備課の川づくりでは、今後の改修の際に多自然を心がけることはもちろんですが、何らかの工夫でコンクリート張り河川の自然再生を図る方法はないものかと考えます。

 また、農都整備課の農業農村整備事業においては、特に来年度から、日本型直接支払制度があります。これはまさに、農村の公益的な役割に注目したものですので、環境配慮の取り組み実例を示してこれが普遍化するようにしていきたいと考えます。