土地利用あり方研究会(市長日記H29.2.4)

更新日:2020年03月24日

 私は全国市長会の「土地利用行政のあり方に関する研究会」の委員を務めており、篠山市の土地利用計画はモデルとして取り上げていただいています。
 大きな流れは、これからの少子化時代を迎え、駅周辺やまちなかの整備、空き家の流通や対策などに力を入れるべきで、農地を虫食い的に転用してのバラ建ちは抑制すべきだということです。
 しかし、これに対し人口を何としても増やしたい各自治体のなかでは、優良農地でも、もっとたやすく転用して住宅を建てることを認めるべきだという声もあります。
 ですから、いつも議論はかみ合わないところもあります。

 新聞で、「あなたのまち、将来本当に大丈夫ですか?」という少しびっくりする見出しで「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」(野澤 千絵著、講談社現代新書)という書籍を見つけました。
 以下抜粋です。

 地方都市を車で走ると、農地の中に、住宅、工場、店舗などが混在して建っている様子をよく見かけます。様々な用途の建物が混在して虫食い的に開発されていくと、それぞれの環境や活動に、悪い影響を及ぼし合ってしまうのです。
 ではなぜ、地方都市で住宅のバラ建ちが進むことを止められないのでしょうか?
 こうした区域は、「非線引き区域」と呼ばれています。
 市街化調整区域の大幅な規制緩和を行うようになり、多くの市町村では、隣接する市町村の人口をどんどん引き抜いてでも、自分のまちの人口を増加させることが大きな目標となっています。そのため、非線引き区域と言う規制の緩い(政策的には楽でおいしい)状況からは、絶対に変更されたくないのです。
 そして、農地等を転用して土地活用を行いたい土地所有者の思惑、どこでも何でも自由に建てたい不動産・建設業界の思惑、人口増加や産業誘致を進めたい開発志向の首長や議員等の政治的思惑など、様々な思惑が絡んでいるため、残念ながら、長期的な視点にたって、都市計画が実効性ある形で見直されることはほとんどありません。
 近隣市町村間での人口・開発需要の奪い合いを防ぎ、真摯に都市計画に取り組む市町村が損をしないように、各市町村が、最低限同じルールのもとで、極めて限定的に規制緩和を行うような都市計画の新たな(本来あるべき)枠組みが必要になっているのです。
 日本は、空き家も老いた住宅も右肩上がりに増加し続けています。にもかかわらず、超高層マンションの林立や郊外・地方都市での新築住宅のバラ建ちは止まらず、住宅総量だけでなく、居住地総量が拡大し続けています。
 日本の病巣として抱えている「住宅過剰社会」から脱却するために、新築住宅の総量規制以外に、私たちが取り組むべき7つの方策を提案します。

  • 方策(1) 自分たちのまちへの無関心・無意識をやめる
  • 方策(2) 住宅総量と居住地面積をこれ以上増やさない
  • 方策(3) 「それなりの」暮らしが成り立つ「まちのまとまり」をつくる
  • 方策(4) 住宅の立地誘導のための実効性ある仕組みをつくる
  • 方策(5) 今ある住宅・居住地の再生や更新を重視する
  • 方策(6) 住宅の終末期への対応策を早急に構築する
  • 方策(7) もう一歩先の将来リスクを見極める

 住宅過剰社会の助長に歯止めをかけなければ、将来世代の開発需要を先食いしているようなものです。団塊ジュニア世代が働き盛りで、人口や経済にまだ若干の余力があるうちに、都市計画や住宅政策の抜本的な見直しに着手しなければ、手遅れになってしまします。
 自治体の中には、独自にまちづくり条例を制定するなど、長期的な視点から真摯に都市計画に取り組み、日々奮闘しているところもあります。