市名変更の今 その1「経過と反対意見」(市長日記H29.9.15)

更新日:2020年03月24日

 「丹波篠山市」への市名変更問題について、6月~8月にかけての各地のふるさと一番会議で説明と問題提起をしてきました。
 出席していただいた方には、大方の理解が進んでいると感じていましたが、多くの市民にはまだまだこれからで、さてこれからどうするのか。
 やはり、変更によって、どのような経済効果などがあるのか調査をして提示しなければと考えていました。
 このような中、9月5日に、「反対」の立場からの要望が出されました。
 これと前後して、神戸新聞では市民130人に実施したアンケートの結果、3回にわたり「賛成34%反対39%」「市民不在の議論懸念」「説明不足の声多数」と大きく報じていただきました。
 また、先日は丹波新聞が、市会議員への意向調査をされ、「賛成反対5人拮抗、決めかねる7人」とこれまた大きく報じていただきました。
 昨日、救急医療の会合がありましたが、医師会の河合会長は「若い人が変更に声を上げているのに、年配者が反対している状況のように思う。このままではまちのためというやる気がなくなるのではないか」と心配されていました。
 そこで、「経過と反対意見」「市民の声を聞け」「市民を二分するな」「政治生命を掛けよ」について、今、考えていることをお話しします。
 まずは、「経過と反対意見」について、整理しましたので、ご覧ください。

ふるさと一番会議での市長報告

平成23年にこの問題が議論されましたが、市議会でも市民の間でも賛否が分かれ、市民を中心とした検討委員会では、「市の優先課題である財政再建の見通しが立ってから行うべき」「地域ブランドの強化・定着・維持を進めるべき」とされていました。
その後、財政再建を進めることと併せて、特産の振興、ブランド力の強化など、住みよい篠山づくりに努め、私たちのまちは「丹波篠山」として、全国的に通用し、おいしい農産物、きれいな城下町、田園、自然と文化など大変良いイメージが定着しています。日本遺産のまち、ユネスコ創造都市、全国景観モデル都市に選ばれるなど、大きく飛躍するチャンスです。
このような中、本年に入り、商工会、農協、観光協会から「丹波篠山市」への市名変更の要望が出され、要望の声が広がってきました。(注釈)

これは、丹波市発足以来、「丹波」は丹波市を指し、「丹波篠山」は丹波市と篠山市を指すという混乱が大きく広がって、このままでは私たちの「丹波ブランド」「丹波篠山ブランド」を失いかねないからです。
そこで、市制20年を機に、「丹波篠山」ブランドを市名にして、未来にわたりこれを守るとともに、より魅力ある活力あるまちづくりに取り組もうというものです。
私は、「丹波篠山」がどこを指すのかあいまいになってきていることが大変心配ですし、市長として出かけた時、「篠山市」だけでは、北海道、東京、九州などで全く通用しなかったこと、「丹波篠山」は知られているという自分自身の経験からも(篠山の知名度は3割未満、丹波篠山は7割と言われます)、ブランドを確かなものとし、未来に良いまちづくりをすべきだとの意を強くしています。
しかし、反対の意見については慎重に検討します。
どうか、市民一人一人が自分のこととして考えていただき、ご意見をお願いします。

(注釈)市名を「丹波篠山市」にする市民の会:
篠山市商工会、丹波ささやま農業協同組合、丹波篠山観光協会、丹波ささやま栗振興会、篠山市旅館組合、篠山商店街連合会、丹波立杭陶磁器協同組合、篠山市薬剤師会、篠山市認定農業者連絡協議会、篠山市菓子工業組合、篠山市医師会、多紀糧穀事業協同組合、ささやま桜協会、篠山市農村女性組織連絡会、丹波木綿保存会、丹波篠山楽空間、篠山担い手農業者協議会

ふるさと一番会議での小西県議会議員の問題提起

小西県議からは、原産地表示についての兵庫県の現状と、混乱が進めば「丹波篠山産」が使えなくなる心配があるので、市名変更が必要だとされました。
国から食品表示法の権限を一部委任されている兵庫県は、平成27年から、JA丹波ささやまに対し「丹波篠山産」から「兵庫県篠山市産」と表示するよう指導されています。
これは「丹波篠山」の範囲が、旧篠山町か現在の篠山市なのか、あるいは丹波市と篠山市を含む広いエリアなのか特定しかねる、等のことから、消費者に誤解を与えないよう自治体のエリアを表示するよう指導している、というものです。
 国においては今のところ「丹波篠山産」は認められていますが、消費者庁は「将来的に、仮に「丹波篠山」という呼称が丹波市と篠山市の両方を指すと幅広く認識されるようになれば、「丹波篠山」という産地表示のあり方が問われることもあり得る。」としています。

原産地表示の変更点を「丹波篠山産」から「兵庫県篠山市」に変更を示しているイラストの写真

反対の立場からの要望とこれに対するコメント

9月5日、市名変更に反対する立場からの要望書が提出されました。
代表の梶原 周逸さんをはじめ、8人の皆さんにお越しいただき、市名変更は、即刻、白紙に戻すよう要望されました。
梶原さんのご労苦に感謝申しあげますとともに、反対の立場の方を含め、市民の声を大切に進めていきたいと考えています。
要望の内容は、市名変更反対の理由に加え、市長、小西県議、要望を出された11団体などへのご意見も多くありますので、要約して紹介し、これに対するそれぞれの説明も合わせとりまとめました。

篠山市長に対する意見とコメント

  • 市長は本来公正であるべき立場にもかかわらず、丹波篠山市への市名変更の必要性を熱く語って洗脳している
  • 費用の無駄使いだ。もっと有効なお金の使い方を希望する
  • 将来の不安は、介護、福祉の問題。福祉施設が必要である
    お金を使う優先順位が全く違う
  • 6,000万円も1億円も使うならば、工場や企業誘致をしてほしい
  • 篠山市となって以来、市はどんな努力をしてきたのか、努力不足だ
    丹波市の知名度が高いというならば、それはPRに長けているからではないか
  • もっと市民の声を聞くべきである。市民全体で、意見交換すべきである
  • 仮に、市名変更を進められるときには、住民投票を実施すべきだ

上記に対し、酒井市長は、

  1. 私は個人的には「丹波篠山市」へ市名変更をすることでブランドを確かなものとし、未来によいまちづくりをすべきだとの意を強くしています。
    かと言って、反対の意見は積極的に受け付け慎重に検討します。
    広報紙6月号に要望団体の声を載せ、6月から8月にかけてふるさと一番会議で今の状況を説明しましたが、それで説明を尽くしたとか、市民理解が得られたとは全く思ってもいません。
    議論は始まったばかりなのです。
    今後、論点を整理し、公開討論会、市名変更に絞っての意見交換会、アンケートや意見募集などを私なりに思案しています。
    市長として、市名変更を決断し、これを市議会に上程するには、反対意見を検討してもなお変更すべきだと確信でき、しかも多くの市民が賛同理解されていることが必要だと考えています。
  2. 市の財政負担(約7000万円)が必要となることから、「丹波篠山」ブランドを市名にすることで、観光、農業、定住、まちづくりなど、どのような効果があるのか、それがどのように市民生活の向上に結びつくのか、判りやすく示せるように調査をはじめています。
  3. 篠山市は、農都宣言、景観まちづくりモデル都市、日本遺産、ユネスコ創造都市、古民家再生など、他の市町に負けないまちづくりとPRに努めています。
  4. 住民投票は、市長と議会の意見が食い違ったとき、あるいは、市民の意見が全く二分されているときには、検討すべき手法であると考えられますが、できるだけ、市民を二分しないように進めていきたいと考えています。

小西県議会議員に対する意見とコメント

  • 市名変更によって、財政が豊かになれば、市民の生活も豊かになるなど、全く根拠のないコメント
  • 今、市名を変えなければ丹波篠山ブランドが使えなくなるというチラシはウソの表現ではないか
  • 産地表示について、不安をあおっている
  • 県議の発言には、市名を変えさせるという偉業を成し遂げようと勘違いしている

上記に対し、小西県議会議員は、

市名変更は地方創生に関わる議論です。私の県政だよりNo.40及びNo.41では、市名変更によって、まちの魅力などを底上げし、地域活性化につなげていくという考えを紹介しました。私は、地域経営における地域ブランド戦略として、「市名」の活用を訴えているのです。

では、地域ブランドとは、どのようなものでしょうか。経済産業省では、「地域ブランド化とは、(1)地域発の商品・サービスのブランド化と、(2)地域イメージのブランド化を結び付け、好循環を生み出し、地域外の資金・人材を呼び込むという持続的な地域経済の活性化を図ること」としています。また、ブランド総合研究所では、「地域ブランドとは、『地域に対する消費者からの評価』であり、地域が有する無形資産のひとつ」とし、「地域ブランドとは、単に地域の名前を冠した商品やサービスが売れる、あるいは地域のイメージが向上するということだけでなく、その両方を有機的に結び付けることにより好循環をもたらし、地域外の多くの人を惹きつけることで、地域に資金や人材を呼び込むという、持続的な地域の活性化につながる地域のブランドづくりと考える」としています。

以上のように、地域ブランド戦略は地方創生における意義ある挑戦であり、市名変更はその取組の一つです。例えば、本市の地域経済循環率 は80%となっていますが、少子高齢化が進む中、この数字を下げず、むしろ伸ばしていくためには、基幹産業である農業やそれに基づく観光資源の付加価値を高めることが求められます。市名変更により、“丹波篠山”ブランドの所在・所属を確たるものとすることは、地域経済の活性化の促進、ひいては市民サービスの向上に結びつくものと考えています。

先人が守り続けてきた“丹波篠山”ブランドは、「地域に対する消費者からの評価」であり、私たちみんなの「無形資産」です。大切に維持し、後世に継承していく必要があるのではないでしょうか。そのような市民の公益をいかに守るかという視点に立って訴えているのです。誇張でも、嘘の吹聴でもありません。まして、偉業を成し遂げたいなどということは毛頭ありません。体は小さくとも、そんな小さい考えで活動しているわけではありません。私の思いをご理解いただくとともに、市名変更に関する議論の一助にしていただきたいと願っています。
「地域経済循環率」とは、生産(付加価値額)を分配(所得)で除した値であり、地域経済の自立度を示している。(値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高い。)<地域経済分析システム(RESAS:リーサス):経済産業省及び内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)>

市名変更の要望書を出した11団体への意見とコメント

  • 市長は多くの団体からの要望書は重いとしているが、それは各団体のトップだけが決めたもので、構成員の意思は反映してない
  • 商工会、JA、観光協会、旅館組合の会員であるが、(要望書を提出することについて)会員へは知らされていない
  • 物が売れないから、紛らわしい市名があるから、変更するなどというのは、恥さらしだ
  • 企業努力が足りない
  • 署名活動は、近所づきあいといった人間関係で反対が表明しにくい

上記に対し、要望書を出した11団体は、

  1. いずれの団体においてもきちんとした意思決定をしています。
    商工会は、理事会で決定、総代会で報告、会報で周知。観光協会は、理事会で決定、総会で報告。JA丹波ささやまは、理事会、総代会で報告。栗振興会は、総会で決定。旅館組合は、全組合員一致。商店街連合会は、総会で役員会に付託し、役員会で決定。丹波焼組合は、総会で決定。菓子工業組合は、全組合員で一致。ささやま桜協会は、役員会で決定、会員に通知。農村女性連絡会は、役員会で決定。企業懇談会は、幹事会で決定。
  2. 署名については、多くの市民の方に問題意識を持っていただき、理解を広めるため行っていますが、無理にならないように、十分配慮して行います。

また、酒井市長は、

市名変更を要望されている団体は、今回の要望はみずからの利益だけでなく、市民全体と将来の篠山市を思ってのものと考えます。
精根こめて良い農作物、特産物を作ったり、デカンショ祭、味まつり、陶器まつりなどを盛り上げたり、篠山のまちづくりを担って来られた皆さんです。

市名に関する意見とコメント

  • 変更の必要性を感じない。ささやまと平仮名にすべき。
  • 丹波篠山はブランド名として使うことでよい。市名にまでする必要はない。
  • 丹波篠山市に変えても今の若い人にとっては、どこかというのは無意味。丹波にこだわる必要はない
  • 市名は字数が少なく簡単な方がいい。高齢になると長い市名を書くのは大変だ。
  • 市民や企業にとって数々の住所の変更手続きをしなければならない

上記に対し、酒井市長は、

ふだんの生活のなかで、丹波篠山ブランドの大切さを感じている人は、一日も早く市名変更をと訴えられ、そうでない人は必要性を感じられず、関心が薄いかもしれません。
市として、十分な変更の必要性やデメリットなどが提供できていませんので、現在調査中の経済効果やまちづくりへの影響をとりまとめ、賛否の論点を整理して、分かりやすくお示しし、議論をすすめたく考えます。