美しくかけがえのないふるさとを守る(市長日記R3.10.27)

更新日:2021年10月27日

令和3年10月27日

桑原集落は丹波篠山市のいちばん北にあり、そのなかの「河谷(こうだに)」と呼ばれる小さな谷あいの地区があります。

その名のとおり、川と谷がある「山紫水明」がぴったりの自然豊かなところです。決して便利とは言えませんが、清く、安らかで、あたたかな土地です。

今ここで暮らす人も、すでに故人になった人たちもこのふるさとをこよなく愛し、ここにあこがれ移り住んできた人もあります。

 

この桑原集落において、ある養鶏業を行っている事業者が平成28年から29年ごろに鶏舎を大幅に拡大され、約5000羽~約6000羽の鶏を飼育されたため、平成30年ごろから、住民から市に対し、悪臭、粉じん、換気扇騒音などの被害を訴えられ、改善を求められました。

 

そこで、市において調査しましたが、悪臭防止法の基準を上回る場合もあり、「窓を開けて食事ができない」「寝室にも悪臭が入り眠れない」「昼夜を問わず大型換気扇の騒音がする」「洗濯物を干せない」など生活環境の侵害は甚大なものがあると判断されました。

また、住民から事業者に被害を訴えても、事業者は協議に応じられず、謝罪もなく、誠意がないとのことでした。

 

市においては事業者に対し、住民との協議を呼びかけたり、平成30年11月から2年間の間に6度にわたり改善の勧告や命令を繰り返しましたが、これを裁判で争われるばかりで、改善がなされませんでした。

 

そこで、市は本年1月28日、丹波篠山市環境保全条例に基づき、事業者の行為は条例で定める設置届の提出がなく、また、規制距離基準に違反すること、農地法や悪臭防止法に違反すること、また、その不快な臭いにより生活環境を著しく侵害していると認め、事業者の氏名等の公表を行いました。

さらに、本年6月11日、兵庫県は事業者に対し、農地法違反などにより、鶏舎が建設されている土地を令和4年12月11日までに農地として原状回復するように勧告しました。(これについては、令和3年6月17日、令和3年6月21日のこの日記に記したとおりです。)

 

さて、ここでは実名をあげますが、この事業者の立場に立って議員活動をされてきた市会議員がおられ、それが渡辺議員です。

渡辺議員の言動は様々にありますが、なかでも「河谷養鶏場における臭気認識の相違について」と題する報告書(これは「臭気は生活に著しい支障を及ぼしているのは考えにくい」と渡辺議員の所見を述べておられます)を作成され、これを事業者が裁判や公害調停において使用されています。

 

桑原集落の皆さんは、9月の市議会に請願を提出されました。

これは「市会議員は市民全体の代表者として行動すべきであるのに、被害を訴える市民の声や市の意見を全く聞くことなく事業者からのみ聴き取りや資料を受けて報告書を作成した。わずか一日のしかも短時間の調査での印象に過ぎず、全く実態を把握しないものである。これは違法状態にある事業者への事業存続への協力行為にほかならず、住民として断じて許し難い」として報告書の撤回とあわせ丹波篠山市議会政治倫理条例の制定を求められたものです。

 

この請願は9月30日の本会議で、報告書の撤回と謝罪を求める勧告決議が可決され、森本議長は「請願は長きにわたり苦しんでこられた地域の方の思いが込められたもので重く受けとめる必要がある。渡辺議員には真摯に受けとめ、誠意ある対応をお願いする」とされました。

 

しかし、これに対し渡辺議員は10月24日の新聞折り込みで、「議員活動について説明します」と題するチラシを発行されました。

それは9月30日の市議会の決議は受け入れ難いというもので、その理由とするところは市議会の審査が公平性を欠いたものであることに加え、市や市長の事業者への対応をあげておられます。

しかしその内容たるや、真実でなかったりわい曲されています。

例えば「事業者が市長に移転協力の話をした1週間後に氏名公表の事務が開始され、氏名公表された」とありますが、全く話が異なるのです。

 

昨年12月、渡辺議員から市長に対し事業者と会ってほしいと申し出があり、12月15日、渡辺議員、事業者夫婦とお会いしました。

「鶏舎を他に移転させることで解決を図りたい」とのことでしたので、解決に向けて前進するものと嬉しく思い、住民の方にご意見を伺いましたが、事業者の言われることは信用できないとのことでした。そこで、市長は12月23日事業者宅を訪問し、渡辺議員も同席のもと「1月20日までに桑原自治会と話し合い、そしてせめて明け渡しの約束をしてほしい」とお願いしました。

しかしながら事業者は1月20日までに桑原自治会に何らの協議の申し入れすらなされませんでした。また、このことについて渡辺議員からも何の説明もありません。

住民の皆さんは「全く誠意がない。長い間苦しめられ待ち続けているのでこれ以上待つことはできない」とのことでしたので、事業者の立場もおもんばかり慎重なる対応をしてきましたが、市民の生活環境を守るため氏名公表に踏み切ったものです。

 

渡辺議員のチラシに「(事業者の)京都府内への移転協定がまとまった」とありました。これが本当なら、本当に嬉しい限りです。

長い間の桑原集落の皆さんの苦しみが解かれ、美しいふるさとが取り戻せるなら、市としてどんな協力ができることがあるのかどうかを検討します。もちろん、市議会、市民のご理解が必要です。