07 ゆるぎ橋 町の田

更新日:2020年06月25日

其の7●ゆるぎ橋 ■町の田

昔、むかし町の田(ちょうのた)の南に小川が流れていたそうな。その小川には、丸木橋が架(か)けてあったが、小川は白う濁(にご)っとって、そこに福の神が住んでおった。
ある時、貧しい若者がその橋を渡ろうとしたんやが、福の神は、どんな若者か試しとうなって美しい少女になって若者の前に現れたんや。
若者は、少しも惑(まど)わされんと、「おまえはだれや。」と静かに聞いたそうや。
福の神は、今度は若者が渡っとった橋を激しく揺すったんや。どんどん強うしても平気で、堂々と橋を渡りきって家に帰りついたんや。
今まで、こんな立派な態度で橋を渡った者はおらんかったので、福の神は、たいそう感心して、その若者を見守ることにしたんや。
やっぱり働き者でなんでも一生懸命にするんで、だんだん財産が増えて長者(ちょうじゃ)になったんや。
福の神は、なるほど、なるほどと納得して、それからその丸木橋はゆるぎ橋と呼ぶようにしたそうな。