10 古佐の大力(たいりき)、五十兵衛 西古佐

更新日:2020年06月25日

其の10●古佐の大力(たいりき)、五十兵衛 ■西古佐

今から6百年ほども前のことです。
古市(ふるいち)の二村神社(ふたむらじんじゃ)のお祭りに、村々で大変な争いが起こりました。
どうしても話し合いができないで、村々ではとうとう御神像(ごしんぞう)と神具(しんぐ)、みこしなどを思い思いに持って帰りました。
その頃、味間(あじま)の西古佐(にしこさ)に、小柴(こしば)というとても力の強い人が住んでいました。この話を聞いて、さっそく、みこしを一人でかついで持ち帰ろうとしま
したが、たいそう重いので道々休みながら帰っていきました。それを見た味間の人たちが、「おい、小柴さん一人じゃないか。わしらも手伝おう。」
と、みんなで後からかついで帰りました。
けんか別れをしてからは、お祭りを別々にするようになり、味間にも二村神社ができました。そしてお祭りのこしの先棒(さきぼう)は西古佐の人がかつぎ、後棒(うしろぼう)は味間の人がかつぐようになりました。
ところが、江戸時代の終わりごろ、西古佐に五十兵衛(いそべい)という力の強い人がいて、みこしかつぎに出ると、負けたことがなくびくともしません。五十兵衛さんは人に負けるのが大変嫌いな人ですから、もっともっと力の強い人になりたいと思って、神様に、「どうかわたしを、千人力(せんにんりき)にしてください。」
と、毎晩毎晩願いしましたが、21日目の真夜中に、神様が、「五十兵衛や、あんまり熱心にお願いするから千人力にしてやろう。」
と、声がしました。五十兵衛さんは、びっくりしてうれし泣きに涙を流して喜びましたが、さあ帰ろうとすると、足が土の中にめり込んで動けなくなったのです。千人力の力持ちになれたからでした。
でも、これでは大変です。さすがの五十兵衛さんも困ってしまいました。
「神様お願いです。足が土にめり込んで動けません。どうか、もとどおりの人間で、十人力位(じゅうにんりきくらい)にしてください。頼みます。」と何べんも何べんもお願いしました。
十人力になった五十兵衛さんは、大変喜んで帰っていきましたが、それからのお祭りには、五十兵衛さんのいる限り、みこしかきは負けたことがなかったということです。