12 犬飼物語 犬飼

更新日:2020年06月25日

其の十二●犬飼物語 ■犬飼

福知山線篠山口駅から西へ一キロメートル余り行った所に、犬飼村の大歳神社があります。この神社には、人身御供の伝説が残っています。
むかし、ある年氏子の中に五人七人と行方不明者が出てきました。これは神のお怒りの禍であるといって、氏子の連中が相談して、人身御供をあげることに決め、くじを引いて、祭りの夜に供えることにしました。
ある年の犠牲者に当たった家では、大変悲しみ、何とかこの災難をのがれようと、ただ一心に神にすがり、三七日の祈祷をしました。その満願の明け方、一人の童子が現れ、神のお声を伝えました。
「氏子の悲嘆を聞くに忍びず、霊験を持って汝らに教えよう。江州多賀明神は、伊裝冉尊を祀、江州犬上郡にあり、元この宮も人身御供の禍があった。鎮平犬という犬が化け物を退治し、この厄をのがれた。今もこの犬が犬上郡にいる。借りてきて、例祭の時この犬を器に入れておけ。神は不思議な力をこの犬に与えるであろう。」
これを聞いた村人は大いに喜び、神のお告げのとおり犬を借りてきて、箱に納め、しめ飾りを神前に供え、
木のかげにかくれ刀を構えて待ってました。
夜半になって、天地をゆるがす大音とともに怪物が現れ、拝殿に躍り上がり、供え物に手をかけるやいなや、中にいた鎮平犬がすごい声を出しながら、怪物にかみつき、ともに縁から落ちていきました。上になり下になり、ころげまわる怪物を見て、隙をうかがい数太刀切りつけ、見事怪物を退治することができました。怪物は、三眼の大狸だったということです。
その後、鎮平犬は大切に村で飼われ、村名もこのことから犬飼村と改めえられました。