18 古市の蛭子さんの伝承 古市

更新日:2020年06月25日

其の十八●古市の蛭子さんの伝承 ■古市

昔、むかし、古市の街は、いろんなお店が並んでいたり、又、宿屋があったりして、とても賑やかな街でした。
ある日、街の南側の谷から、蛭子さんの形をした小さな石が出てきました。蛭子さんというのは商売が繁盛するようにお守して下さる神様なのです。街の衆はこの石を大
切に持ち帰って、庚申さんの側に台をつくってお祀りをしました。
すると、不思議なことに、古市の街は前よりもっと商売が繁盛するようになり、たいそう栄えてきました。
けれども、いつの頃からか、街の景気が悪くなってきたのです。ふと、気がつくと庚申さんにお祀りしてあったはずの蛭子さんがなくなっていたのです。
街の人達は、きっとあの蛭子さんがいなくなったので景気が悪くなったのだろうと、八方手を尽くしてさがしました。いろんな所へ商売に行った人とか、方々の土地から商売に来た人などの話から、大阪の南で、最近えらく景気の良い街があるということを聞き、大阪へ商売に行った人がついでに立ち寄ってみると、その街の道ばたに蛭子さんが祀ってありました。よく見ると、古市で無くなった蛭子さんだったのです。
さっそく、夜を待ってこっそりとその蛭子さんを盗んで帰りました。
街の人達は、
「これでひと安心や、えらい遠いところへ行っとったったんやけど、これからはまた古市の街を守ってもらえますようどうか頼みます。」
「以前のように商売が繁盛しますよう、よろしゅうおたのみします。」
それぞれの願いをかけてまたもとどおりの場所へお祀りしたのです。すると、街は前のように景気が良くなってきました。ところが大阪の南の街の景気が悪くなってきて、街の人は蛭子さんが無くなったのに気付き、さっそく古市へやってきてまたまた蛭子さんを盗んで行ってしまったのです。
するとまた、古市の町の景気が悪くなってきたのです。街の人達は、また大阪の人に取られたと気付き、はるばる大阪の南へ出かけてみると、今度は盗まれないようにと、小さな祠が造られ、しっかりと鍵までかけてあるのです。もう取り返すことは出来ません。 仕方なく、古市へ帰って街の人達に訳を話し、相談したのです。
「以前のように景気がようなるようにするんには、どないしたらよいやろ。」
「蛭子さんに守ってもらわんと、どないもならへんしなぁー。」
「そや、蛭子さんのご神体を木でつくってもろうたらどないやろ。」
というわけでみんなで相談して宗玄寺の住職に頼み、木の御神体を作ってもらいました。 それからは、街が繁盛したので、ご神体をお祀りする神社を建てることになりました。 宗玄寺の参道の脇に神社があるのを知っていますか。その神社がこの時建てられたものだそうです。そして、先にお話した蛭子さんの形をした小さな石が出てきた谷を今も「蛭子谷」と呼んでいます。