31 竜神の滝壷 大山新

更新日:2020年06月25日

其の三十一●竜神の滝壷 ■大山新

ある日、夏男君が、
「おじいちゃん。大山川に竜が住んでいたお話をして。」
と言いました。おじいさんは目を輝かせながらぼつぼつと話しかけました。
「その話はな、大山川の流れている所で、徳永と言う地名があってな。そのところに滝があるのや。その下には大きな滝壷があったのや。大山川はきれいな川でな。夏男も知っているように細長く流れているやろ。また、右や左からいくつも小川が流れ込んできてな、丁度、その姿が竜に見えるのや。徳永のところが竜の頭に当たるのや。」
「むかし、1人の若者がこの滝壷で魚釣りをしていたのや。するとにわかに大夕立にあってな。そのとき、それはきつい稲光が滝壷に射したのや。若者は、「わあー!稲光だ!!」と腰を抜かすほどひっくりするやら驚くやら、と同時に一匹の竜がその稲光と共に天に昇っていったということや。」
「ふぅーん」
「この年は、日照り続きの大変な干ばつがあってな、しかし、このことがあってからから雨にも恵まれ、豊作になったということや。」
「そう」
「このことがあってからというもの、日照り続きの年は、滝壷で雨を下さいと雨ごいするようになったと伝わっているのや。」