三ツ池のきつね(雲部)

更新日:2020年06月25日

藁で体をこする男性の絵

剛山の北側に古い池が三つ並んでいるので「三ツ池」と呼ばれています。三ツ池のほとりでかわいい子狐をつれた母子狐が仲良く暮らしていました。野にはれんげの花が一面に咲き乱れています。「きれいなお嫁さんになったよ。」
子狐は母狐にれんげの花やたんぽぽの花をつけてもらってうれしくなりはねまわっていました。
夕方になって、きれいなお嫁さんになった子狐は、母狐の後ろからついて帰りました。
仕事に来ていた五作は剛山から帰る途中あんまりきれいなお嫁さんが前を通っていくのでしばらく見とれていましたがついついて行ってしまいました。
「こんばんは。こんばんは。すみませんが、仕事で体がよごれていますのでお風呂に入れてもらえませんか。 」
「はい、はい。どうぞ。」
「ああ、今日はあんまりよいお天気だったので、よう疲れました。」
と、五作はひとりごとを言いながら着物を脱ぎすててざんぶりと入りました。
そこへ通りかかった隣の源六じいさん。お風呂に入っている五作を見てびっくりぎょうてん。
「五作さん。五作さん。何してはるんじゃいな。」
お風呂に入っていたはずの五作は野つぼに入ってわらで顔を洗っていました。
「や、や、や。これは何じゃ。まんまと狐にだまされおったわ。」
五作は、野つぼからはい上がり、物もいわずにとんで帰りました。