おに坂(県守・垂水)

更新日:2020年06月25日

山賊が描かれた絵

県守と垂水との境に「おに坂」というさびしい峠があります。むかしは民家も少なく、山林や荒野の多いこの辺りには、山賊やおいはぎが住みつき、人々を悩ませていました。
「へへへ・・・。ここなら大声を出されても近くに家一軒も ねえだ。まったくもっておあつらえむきだぜ。へへへ・・・。」
と、おいはぎはしめた!とばかり刀をぬいて身ごしらえをしました。
「まてっ。おとなしくいうことをきかねえと命はないぞ。」
行商人は身ぐるみはぎ取られてしまいました。
村の人々は、
「あそこの峠には鬼がでるそうな。」
「おそろしい峠じゃ。これじゃ野菜もまきも売りにも行け へん。」
「うちじゃ病人のくすりも買いにいけへん。こまったことに なった。」
と、ひとびとは苦しみ、鬼が出る坂「おに坂」と呼ぶようになりました。
むかしの道は、いまのようなみちではんく、もっと曲がりくねった峠でありました。人や荷車が行き来する数もふえて来るようになったので、弘化三(一八四六)年、もっと通りやすい、今のような道につくりなおされました。
今は、山賊もおいはぎも出なくなりましたが、お嫁入りをするときなど、この道は絶対に今も通らないと言われています。