【開催レポート】「丹波畦師」とこれからの草刈りを考えよう 環境まちづくり座談会#1

更新日:2021年04月01日

1月21日、第1回環境まちづくり座談会をオンライン形式で開催しました。初開催にもかかわらず、市内外から10名の方にご参加いただきました。ありがとうございました!

 

イントロダクション

まず、この座談会の趣旨について、市役所の農都環境課から説明を行いました。

2020年に策定された「第2次丹波篠山市環境基本計画」では、市民の方の声を取り入れるため、前年にアンケートが実施されています。

その結果を読み解くと、市民の皆さんの環境への関心はとても高いことが分かりました。

一方、関心はあっても、「何から始めたらよいかわからない」「一緒にやる仲間がいない」「市内の活動の情報が少ない」など、行動に移す際にハードルがある様子がうかがえました。

この座談会は、そうした背景を踏まえ、「市内でどんな取り組みがあるのかを知ろう!」「日ごろ感じている課題を共有しよう!」という趣旨で開催しています。

 

ゲストトーク・話題提供

つぎに、吉良佳晃さん(丹波篠山 吉良農園)から、現在取り組まれている「丹波畦師プロジェクト」について、プロジェクトを始めるに至った経緯やこれまでの活動を紹介していただきました。

 

6年前にUターンで実家の農園を継業した吉良さん。

地域が直面している大きな課題の一つが草刈りだといいます。

 

最近、農家の高齢化や担い手不足で休耕田が増え、草刈りなどの管理が行き届かなくなってきています。

多面的機能支払や草刈隊など、地域の中で草刈りを担う組織をつくる動きもあるものの、地域の人口全体が減少・高齢化しており、年々負担感が増しているそうです。

 

この問題を解決するために立ち上げられたのが「丹波畦師プロジェクト」

畦師(あぜし)」とは、草刈りを担う方の新しい呼び方で、草刈りを作業だけでなく、技能や背景も含めて広く捉え直そうという試みの一環です。

丹波篠山発祥の杜氏集団「丹波杜氏」にちなんで名付けられました。

 

草刈りに関心のある人を市内外から募り、草刈機の取り扱い方法を学ぶ安全講習会、草刈りの目的や生態系・文化との関係などを考えるワークショップを開催されています。

 

吉良さんは、草刈りの担い手不足は大きな課題としつつも、単なる労働力や請負集団をつくることが目的ではないといいます。「丹波畦師」が目指しているものは、美しい農村の景観、地域を一緒につくる「共創型関係人口」だそうです。

 

今後は、自動車免許のような形で「畦師」を認定し、チームや個人の活動につなげる仕組みづくりを目指しているとのことでした。

 

■みんなでトーク・意見交換

つづいて、参加者全員で意見交換を行いました。いくつかご紹介します。

 

―どんな人がプロジェクトに参加している?

吉良さん、東播磨で「畦師」として活動されている参加者の方に伺いました。

意外にも「草刈りという行為そのもの」に関心があって参加する人も少なくないそうです。なかには「都会で『草刈機を使える』と言えたらかっこいい」という感覚の方もいらっしゃるとのこと。

 

これに対しては「草を刈るだけなら、都会でもできるのでは」と、さらに突っ込んだ質問が出ていました。

吉良さん曰く、畦師プロジェクトは「入り口」であって、そこに求めるものは人それぞれで良いとのことでした。

参加者が魅力に感じておられるのは、草刈りそのものだけでなく、作業後におすそ分けの採れたての野菜を味わえること、美しい景観を見て役に立っているという実感を得られることなど、農村ならではのポイントも多いとのこと。

草刈りそのものを楽しむ人、農村ならではの魅力を感じたい人、就農などやりたいことにつなげたい人、いろいろな人の「入り口」にしていきたいと考えておられるそうです。

「畦師のゴールは一つじゃない」という言葉が印象的でした。

 

 

―そもそも草刈りの目的って…?

農作物への影響、作業性、見た目、義務感、、、さまざまな目的や背景があって、農家の方は草刈りをされています。プロジェクトの参加者と何のために草を刈るのかを共有することも大切なポイントだという意見がありました。

ちなみに、吉良さんのワークショップでは、「生態系」という視点も大切にされているとのことでした。草刈りの頻度や時期、方法によって生えてくる植物は変化するため、次の世代に何を残すか?という視点も面白く、必要ではないかとのことです。

農家・農業のためだけでなく、景観や生態系など幅広い視点でも役に立っていることが、参加者目線でも大切なのかもしれません。

 

 

―地域・農家側の目線

「農家の方は『しんどい』と言いつつも、『任せられない』という感覚も同時に持っているのでは?」という意見がありました。

地域の共同での草刈り作業は、世帯ごとに一人ずつ参加することになっているそうですが、若いお父さんではなく高齢のおじいちゃんが来ることも多いそうです。

「任せられない」の意識の裏側はかなり複雑なものがありそうですが、「畦師」として認定されている、免許的なものを持っていることで、そうした心理的なハードルを下げることにつながるのでは、といった意見が出ていました。

 

おわりに

意見交換から、草刈りには「しんどさ」だけでなく「楽しさ」があること、「義務感、強制的にやらされている人」がいる一方で「自発的にやりたい人」もいるということ、裏表の側面があることが見えてきました。

「畦師のゴールは一つじゃない」という言葉もありましたが、いろいろな人がいろいろなモチベーションで草刈りに関わることができれば、(やや楽観的かもしれませんが)いつの間にか草刈りの問題がなくなっていた!ということもあり得るのかもしれません。

 

 

終了後、参加者の方から「地域で草刈りの話をしても、こんなにポジティブな話題にならない」「『草刈りが好き』と公言しにくい雰囲気がある」という感想をいただきました。

 

地域で「課題」と言われていることも、いろいろな視点を加えることで、楽しみや地域の役に立つことにつながる可能性があるのではないか、この座談会で目指していきたいこともそこにある、と改めて感じました。

 

今後もさまざまなテーマで定期的に開催予定です。

次回もぜひご期待ください。

 

 

(記事:丹波篠山市農都環境課)

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