34.大たわと多紀連山

更新日:2020年06月23日

火打岩から多紀連山へ向って快適に登る山間の道を、車で約2キロ走ると「大たわ」(512メートル)に着く。「たわ」とは撓むの当字で、山の稜線のくぼんだ所という意味である。ここは文字通り多紀連山の鞍部の峠で、西側の三岳(793.4メートル)、西ヶ岳(727メートル)と東側の小金ヶ岳(725メートル)への登山道の分岐点となっている。
「多紀連山」は、多紀アルプスとも呼ばれ、京都船井郡丹波町から氷上郡氷上町に及ぶ古成層の山脈である。傾動した断層崖で、チャート(珪石)の露岩が多く、高峰の岩山が連なっている。主峰の三岳頂上からは、大阪の生駒連峰、京都の愛宕山や六甲山などが遠望できる。
これらの峰々には、平安末期(1100ころ)から室町時代(1336~1573)にかけて、吉野大峰山に対抗する勢いの三岳修験道が栄えていた。
しかし、文明14年(1482)6月、大峰山の僧兵が大挙来襲し、寺院はすべて焼失した。今も、「大岳寺跡」、「福泉寺跡」や「水飲場」・「聖の泉」(それぞれ町・史跡)のほか各種の修行場が残っている。
現在、県立自然公園になっており、自然環境が十分保たれ、高山植物や山野草、それに鳥獣も多く、登山道も整備されている。澄み切った青空に映える春の新緑とツツジにシャクナゲ、秋には全山が紅葉に染まる中での雲海など、四季を通じて登山者の目を楽しませてくれる。

「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
※地名・交通経路等は書籍発行時のもので、現在の状況とは異なる場合がありますのでご注意ください。