59.六本柳 (29)

更新日:2020年06月23日

辻川橋バス停から徒歩約5分

国道372号線の日置東の信号を約300メートル東へ行くと、道路右側の歩道の中に柳の大木が一本、何かわけありげにそびえている。これは、大正4年(1915)に五本を補植したうちの一本だという。もとは、ここに六本あって「六本柳」と呼ばれているのである。
これには次のような伝説がある。
一条天皇の正暦年間(990~95)、勅命をうけて源頼光は、碓井貞光、卜部季武、渡辺綱、坂田金時、藤原保昌の5名を引き連れ、丹波の大江山で悪行を続けている酒顛童子の討伐に向った。一行は山伏に姿を変え、笈を負い、打刀を差し、烏帽子・篠懸を着て、法螺の貝を携えてここを通りかかり、小休止をした。そして、宝塔山(小金ヶ岳の南側)をはじめ、三岳連山の修験道諸寺院を遙拝し、戦勝を祈願して、持っていた柳の杖を全員が突き差したところ、神仏の加護の証か、六本とも間もなく芽を出し、大きく生長したと言われる。
ところで、この付近には古くから寺院が多く造営され、仏教が栄えていたことを考えると、六斎念仏・六地蔵とか六字の名号(「南無阿弥陀仏」の六字)など、仏教が大切にする六の数に因んで六本の柳が植えられたのではなかろうかとも思う。そういえば、密教で護摩に焚く乳木には乳汁の多い柳や桑が用いられるようである。

「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
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